介護の仕事では勤務時間前や勤務時間が過ぎてタイムカードを押した後などにサービス残業することが当たり前という職場がありますよね。これは介護の仕事に限らず、どんな業種でもサービス残業ありきで日課を決めているという社風はあります。しかし、労働基準法などでは、時間外労働を行ったときに賃金を不払いとすることを認めておらず違法です。サービス残業で告発したい・残業代を取り返したいときどうするかなども紹介します。
サービス残業とは
サービス残業とは、賃金不払い残業のことです。サービス残業は労働基準法に違反する、あってはならないものです。
賃金不払残業は、 長時間労働や過重労働の温床ともなっており、その解消を図っていくことは、家族との触れ合いを含めたワーク・ライフ・バランスの実現のうえで、大変重要です。
賃金は支払わずサービス残業を強いるのは違法
賃金不払残業とは、「所定労働時間外に労働時間の一部又は全部に対して賃金又は割増賃金を支払うことなく労働を行わせること」であり、労働基準法違反です。
労働基準法とサービス残業
労働基準法は、 労働時間、休日、深夜業等について使用者の遵守すべき基準を規定しています。つまり、使用者は、労働時間を適正に把握する必要があることなどから、労働時間を適正に管理する責務を有しています。
使用者は、賃金不払残業が生じないように、その責務として適正に労働時間を管理しなければなりません。
労働基準法のポイント 賃金、労働時間、有給、休憩のルール
36協定と時間外労働
使用者は、時間外労働・休日労働を行わせるためには、労働者の過半数を組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との間で、書面により36協定を締結しなければなりません。
時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
・時間外労働 ・・・年720時間以内
・時間外労働+休日労働 ・・・月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内とする必要があります。
原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月までです。
法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断されます。
36協定(サブロク協定)と労働組合、介護の残業と待遇
15分の残業、30分の残業だと残業代が出ないのは違法?
30分多く働いたばあに、切り上げて1時間働いたということにして1時間分の賃金を支払うことは認められています(参考:昭和63年3月14日付通達 基発第150号)が、その逆に30分未満の残業を切り捨てて賃金を支払わないことは違法です。
割増賃金の計算に当たっては、事務簡便のため、その月における時間外の総労働時間数に30分未満の端数がある場合にはこれを切り捨て、それ以上の端数がある場合にはこれを1時間に切り上げることができるとされていますが、原則的には、毎日の時間外労働は1分単位で正確に計上するのが正しい労働時間管理といえます。労働時間の端数計算を、四捨五入ではなく常に切り捨てで計算することは、切り捨てられた時間分の賃金が未払となるため認められていません。(労働基準法第37条)
サービス残業を強要・黙認する管理職
賃金不払い残業の原因は、経営者が人件費を抑制するために指示している場合もありますが、労働時間管理が適切でないことや、職場が残業の申請をしづらい風土となっているといった場合もあります。そのような環境では、サービス残業を強要・黙認する管理職も出てくるわけです。
サービス残業で告発したい・残業代を取り返したい
サービス残業の告発には根拠・証拠が必要です。実際の勤務時間や未払いとなった金額などの証拠が必要になるため、サービス残業・時間外残業の未払いが問題だと感じ始めたら、確実に勤務時間や未払いの事実を記録しておくようにしましょう。
労働基準監督署に連絡・告発して調査や勧告をしてもらうという方法もありますが、この場合には事業者を反省させるという効果はありますが、かなり多くの金額の残業代を取り返したいという場合にはさらに踏み込んで弁護士に依頼するという方法もあります。
サービス残業をせざるを得ない職場は危険なので転職も視野に
サービス残業について紹介していきましたが、従来の介護の仕事では献身的でボランティア精神があるべきだという風潮があり、時間外に働いてもサービス残業になってしまうこともしばしばありました。また、介護施設などでは勤務時間より前に出社して朝礼に出ることが強制されていたり、勤務時間後に仕事が残っていたり、上司から業務の支持があったとしてもタイムカードは提示に押すことを強要されるなどもよく聞かれる状態でした。
介護の仕事の待遇はかなり向上してきている
近年は、介護職員の不足による待遇の改善や労働基準法の浸透などにより、介護業界は他業界に比べてもサービス残業が減りつつあります。しかし、これは施設ごとに差が大きくなっているとも言え、いまだにサービス残業が当たり前の施設や、自ら進んで休日に出てきてイベントや手伝いなどをするという社風があるところもあります。このような風潮が合う人はそれで良いと思いますが、時間外に賃金を支払わずに働かせ拘束することは多くの人にとって嫌なことです。
サービス残業・時間外残業が多いことは転職理由にもなる
今は本当に待遇をよくしている介護の職場も増えていますので、施設に蔓延するサービス残業が改善する見込みがないならば転職することも選択肢です。仮にサービス残業が嫌で転職するという理由だとしても、新しく面接を受ける施設でも「サービス残業になってしまいバランスが取れなかったので」ということも理由としてある程度正当性が通るものであると思います。
転職の際には、このような労働の環境や条件のトラブルを避けるために転職サイトに登録したり、転職エージェントに入ってもらい、相談できる第三者に入ってもらうこともよいことだと思います。